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大学入学センター試験2009年度政治経済第4問 労働者の仕事と暮らし 解説解答
問1 解説解答
下線部 aに関連して,さまざまな景気循環の類型についての説が存在する。次の類型A~ Cと,それぞれの循環を引き起こす原因についての記述ア~ウとの組合せとして正しいものを,下の①~⑥のうちから一つ選べ。
A 短期波動( キチンの波)
B 中期波動( ジュグラーの波)
C 長期波動( コンドラチェフの波)
ア 技術革新や大規模な資源開発 イ 設備投資の変動 ウ 在庫投資の変動
① A ― ア B ― イ C ― ウ
② A ― ア B ― ウ C ― イ
③ A ― イ B ― ア C ― ウ
④ A ― イ B ― ウ C ― ア
⑤ A ― ウ B 一 ア C ― イ
⑥ A ― ウ B ― イ C 一 ア
A 短期波動( キチンの波):約40ヶ月の比較的短い周期の循環。アメリカの経済学者ジョセフ・A・キチンが1923年の論文でその存在を主張した。主に企業の在庫変動に起因すると見られる。、21世紀に入って在庫循環が次第に不明瞭になっていることは明らかになっており、グローバル化やIT革命の進展により在庫調整の短期化が要因と見られてきている。
B 中期波動( ジュグラーの波):約10年の周期の循環。フランスの経済学者J・クレメンス・ジュグラーが1860年の著書の中でその存在を主張した。企業の設備投資に起因すると見られる。
C 長期波動( コンドラチェフの波):約50年の周期の循環。ロシアの経済学者ニコライ・ドミートリエヴィチ・コンドラチエフによる1925年の研究でその存在が主張された。この名前を付けたのはシュンペーターで、その要因として技術革新を挙げた。第1波の1780~1840年代は、紡績機、蒸気機関などの発明による産業革命、第2波の1840~1890年代は鉄道建設、1890年代以降の第3波は電気、化学、自動車の発達によると考えた。この循環の要因として、戦争の存在を挙げる説もある。
答 ⑥
問2 解説解答
下線部 bに関連して,日本における賃金・就業形態やそのあり方についての記述として最も適当なものを,次の①~ ④ のうちから一つ選べ。
① 労働者派遣とは,公共職業安定所(ハローワーク)が労働者を派遣することである。
② 年俸制とは,労働者の勤続年数の長さに応じて賃金が決定される制度である。
③ ワークシェアリングとは,雇用の維持・創出を図るために労働者一人当たりの労l働時間を短縮することである。
④ 年功序列型賃金制とは,労働者の仕事の内容に応じた額の賃金が支払われることを重視する賃金制度である。
解説
①労働者派遣: 自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まない。「労働者派遣法2条1」
②年俸制:年間単位で個人の仕事実績、企業貢献度に基づき、社員個人への支払総額を決めようとする制度
④勤続年数など企業内の年功によって賃金が大きく影響される制度
答 ③
問3 解説解答
下線部 cに関連して,日本の中小企業についての記述として適当でないものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 中小企業には,高い技術力で新たな市場を切り開いているものもある。
② 中小企業基本法の主な政策目標は,中小企業の多様で活力ある成長発展から大企業との格差是正へと変更された。
③ 中小企業の従業員数の総計は,大企業の従業員数の総計を上回つている。
④ 中小企業の資本装備率(労働者一人当たりの資本設備額)は,大企業の資本装備率を下回つている。
解説
中小企業基本法の主な政策目標:昭和38年の制定の中小企業基本法では、大企業と中小企業との生産性の格差など,いわゆる「二重構造」を背景とする「格差の是正」を政策理念としていたが、経済的社会的環境の変化により,平成11年12月中小企業基本法が,昭和38年の制定以来初めて本格的に改正され,中小企業政策の基本理念,政策の柱が抜本的に見直された。
小規模企業が幅広い創業活動や積極的な各種の事業展開を進めることが可能となるよう,その自助努力の促進,各種の競争条件の整備及びセイフティネットの充実等を図ることにより,小規模企業層がいわば創業や成長の苗床として機能するよう支援することへ転換することとなった。
答 ②
問4 解説解答
下線部⑥に関連して,現行の日本の法律内容についての記述として最も適当なものを,次の0~④のうちから一つ選べ。
① 消防職員には,団結権が保障されていない。
② 自衛隊員には,団体交渉権が保障されている。
③ 公立高校教員には,団結権が保障されていない。
④ 公営企業職員には,争議権が保障されている。
解説、警察職員・消防職員,海上保安庁職員,監獄職員,防衛省職員については、団結権・団体交渉権・団体行動権の全てが認められていない。
答 ①
問5 解説解答
下線部 dに関連して, 日本の金融をめぐる記述として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 民間企業の資金調達において高度成長期には直接金融の割合が高かったが,その後は間接金融の割合が増加傾向にある。
② バブル崩壊をきっかけとして,銀行の自己資本比率に関する規制(BIS規制)は廃止された。
③ 日本銀行券の過剰発行を防止するため,その発行総額は日本銀行が保有する金の価値総額を超えてはならないこととされている。
④ 1990年代の後半には, 日本版ビッグバンと呼ばれる金融制度の改革が行われた。
解説
① 直接金融:借り手(国や企業)が有価証券(株式や債券など)を発行して、貸し手(個人や企業)から直接的に資金を調達する。
間接金融:金融仲介機関(銀行、信用金庫、保険会社等)が預金の形で貸し手(個人や企業)から資金を集めて、銀行の責任で借り手(国や企業)に貸付ける。
企業の資金調達は、銀行からの融資に頼る間接金融から、株式や社債の発行により資金調達を行う直接金融へと、急速に移行してきている。
② BIS規制(バーゼル合意):昭和63年(1988年) 7月にバーゼル銀行監督委員会が公表。自己資本を分子、リスクの大きさを示す数値を分母とする比率(自己資本比率)が一定以上の水準であることを求めるもので、銀行等の経営の健全性を確保するための重要な規制の1つ。平成16年(2004年)6月に、銀行が抱えるリスク(自己資本比率の分母)のより精緻な計測などを目指して平成10年(1998年)からバーゼル合意の抜本的な見直し作業が開始され、新しい基準 バーゼルII(新BIS規制案)が公表された。
③ 銀行券の発行高の上限をコントロールすることを目的とした最高発行額制限制度:1997 年に成立した新しい「日本銀行法」において廃止された。これは,管理通貨制度の下では,銀行券の価値の安定は日本銀行の保有する資産から直接導かれるものではなく,むしろ日本銀行の金融政策の適切な遂行によって確保されるべきものであること,また,銀行券の発行高は経済取引の繁閑に伴って増減するものであり,最高発行額も銀行券の現実の発行高に追随して変更されてきた経緯を踏まえれば,最高発行額制限制度の意義は希薄になっていること,等の考え方によるものである。答 ④
問6 解説解答
下線部 eに関連して,現行の日本の社会保障制度についての記述として適当でないものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① 公的扶助は,災害での被災者などに対して,低利の融資を行う制度である。
② 社会保険は,病気・失業・老齢などに直面した被保険者に対して,医療などのサービスや所得を保障する制度である。
③ 社会福祉は,援助と保護を必要とする人に対して,施設・サービスなどを提供する仕組みである。
④ 公衆衛生は,病気の予防など,国民の生活環境の改善と健康増進を図るための仕組みである。
解説
公的扶助:憲法第25条「1.すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。2.国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」に規定する理念(生存権)に基づき、国等の公的機関が主体となって、一般租税を財源にして、生活困窮者に最低限の生活を保障するために行う経済的援助。
答 ①
問7 解説解答
下線部③ についての記述として正しいものを,次の①~ ④のうちから一つ選べ。
① イギリスでは,世界で初めて社会保険制度が設けられた。
② ドイツでは,「ゆりかごから墓場まで」をスローガンに社会保障制度が整備された。
③ アメリカでは,ニューディール政策の一環として社会保障法が制定された。
④ 日本では,国民年金法によって社会保険制度が初めて設けられた。
解説
①世界で初めての社会保険制度:ドイツビスマルク政権下で1883年に疾病保険法、1884年に災害保険法、1889年に老齢疾病保険法が制定された。
②「ゆりかごから墓場まで」:第二次世界大戦後にイギリス労働党が社会保障制度の充実に掲げたスローガン。
④日本初の社会保険制度:1922年に制定された健康保険法により1927年から発足した健康保険制度。
答 ③